こんにちは、タカシJJです。
昨年末惜しまれながら閉店したがもよんを代表するカフェ「cafe de GAMOYON」さん。
”いつか人間区宝さんに!”と思っていたので正直焦りました汗。そこでダメもとで急遽インタビューを打診したところ「OK♪」とのこと。フィナーレを飾るスイーツおせちの準備に追われる忙しい年末(2019年の)にお邪魔して、今まで明かされることのなかったオーナーTOMOさんの胸中と今までとこれからについてお聞きしてきましたのでご紹介します。
cafe de GAMOYON代表 TOMOさん
リーガロイヤルホテルをはじめ、数店舗を経て独立。がもよんに古民家を改装したお店「cafe de GAMOYON」をオープンすると瞬く間に人気店に。メディアからの取材も多く近年は海外からのお客さんも来店するなどその実力はおりがみつき。昨年突然閉店を発表し話題に。椎名林檎に似てる気がする(タカシJJ調べ)
目次
確信めいたことを言わないから、みんな納得できないんじゃない?
ーいきなりなんですが、みんなが気になってること聞いちゃいます。ズバリ!!なんで閉店するんですか?
TOMOさん:え~それ言わないとダメですか?(笑)というかいろんな理由があるから1個とか2個とかのレベルじゃない。決定的な閉店理由を求めてると思うけど、そんなシンプルな答えではないですよ。
総合的に考えて今が一番全てのバランスが良いやめ時と言う結論に至ったんです。でもこれで良かったと思ってます。
ー確かにそんな単純な話じゃないのかも。というか、いつからやめようって考えてたんですか?
TOMOさん:1年ぐらいはうっすら考えていました。
ーそんな前から思ってたんですか!?で、結局…
TOMOさん:決めたのが今年(2019年)の夏で、スタッフに話したのは8月。発表は10月かな。
ー記事で紹介させてもらいましたもんね。改めて振り返って「cafe de GAMOYON」というお店はTOMOさんにとってどういうお店だったんですか?
TOMOさん:ここに至るまでに約25年ぐらいかかってるわけだし。いろんなことにチャレンジしたり、今までの経験を全部ここに集約して理想の形にもできた。本当に思いっきりやらせてもらえたし、言ってみればこのお店は夢の店。
ー開店までに25年!?
TOMOさん:そう25年。でもね、ある程度わかってたんですけど何一つ妥協できなかったんですよ。店を作る段階から何から何まで。妥協の仕方も分からないし、力の抜き方も分からない。何か…とにかく全力疾走しすぎた感じ。
ー確かに!食べログの全口コミに返答してるの見て驚愕しましたもん。「この人ヤバい!!」って(笑)
TOMOさん:そこ?(笑)当初10年間は駆け抜けるつもりでいましたし、いけると思って全力スタイルで実際に進んでたんですけど…でもその全力疾走は歳とってからはちょっと厳しい。今からは老後じゃないけど(笑)老後的なもう少し細長い視点で考えていこうと。
ー老後て!
そもそもなぜパティシエに!?
ーさっき「cafe de GAMOYON」オープンするまでに25年かかって…みたいなことチラッと話してましたけど、そもそもどういうきっかけでこの世界に?
TOMOさん:高校を辞めたかったんです(笑)すぐに働くのは嫌だったし、専門学校を探してる時に母に相談したら「昔からパンとか作ってたやん」って言われて、ふと思い出して調理師系の専門学校へ行くことに。とにかく高校を辞めてすぐに働くのだけは嫌だったので(笑)
ーいきなりカミングアウトきた(笑)お母さんごめんなさい!!
TOMOさん:専門学校が始まってからも遊びほうけてて卒業するのも難しいような生徒だったし、ただただ履歴書のために学校に通っていたといっても過言ではなかったですね(笑)
ーよくそれで今に至りますね(笑)
笑ってはります。
TOMOさん:で何とか卒業させてもらって就職したのがリーガロイヤル。
ーリーガロイヤルてっ!!人生のV字曲線が凄い!!なんで就職できたんだろ?(笑)
TOMOさん:ね(笑)当時は先輩職人さんたちをはじめ皆さんすごい厳しかったんですけど、不思議と嫌じゃなかったなぁ~。自分に合ってたんでしょうね。
ーそのままずっとリーガロイヤルで働いて独立を果たされたんでしょうか?
TOMOさん:いえ、その後3年間ホテルで勤務しケーキを担当してたんですけど、お菓子を作ることは好きでもお客さんとの距離が遠かったんですよね。「もっとお客さんの顔がみたいなぁ」って思うようになって個人店に転職したんです。
その後、再度リーガロイヤルに戻ったり、町のケーキ屋さんで働いたりカフェで雇われ店長的なことを経験させてもらったりして約25年目にして独立です。
ー経験値が豊富すぎる汗。なんで独立しようと思ったんですか?
作ってる時は真剣
TOMOさん:「私らしく決めつけずに自由にしたい!ケーキ屋さんっていうよりも、もっとお客さんとの距離が近いカフェスタイルで!」って具体的に考えるようになって。それからは全てのバランスを見ながら、独立するタイミングがくるその時を虎視眈々と待っていましたね。
ーめちゃくちゃ冷静かつ戦略的!!
TOMOさん:こういう仕事に就けることが嬉しいし「お菓子はどんな人も幸せにできる」って信じてるんで。私にとって幸せになれる原点。よく取材等で「こだわりは何ですか?」って聞かれるんですけど、本当に特になくてお客さんの喜ぶ顔を想像して丁寧に作ること。それだけなんですよね
ー素敵ですね!専門学校の時のTOMOさんにこの姿見せてあげたい(笑)
こんなにお客さんが来てくれるお店になるとは思ってなかった
何かしらケーキを作ってるところ。
ーそれだけ時間をかけて理想のお店をオープンさせ、お店も軌道に乗り順調な状態で閉店ってどういうことでしょう!?
TOMOさん:誤解されるかもしれないですけど、元々こんなに忙しいお店になるとは思ってなかったんですよね。今でこそ「がもよん!と言えば」みたいなところありますけど、当時はまだそこまで知名度がある町でもなかったですし、ましてやお店のある場所は完全な裏通り。「大丈夫かなぁ~」なんて思ってたぐらいですから。だからこんなにたくさんのお客さんが来てくださるとは思ってなかった。
ーなんかカッコいいじゃないですか~
TOMOさん:でも本当にありがたい話でたくさんの人に来ていただいて…。結果的に長く続けていくという意味では自分のやり方も良くなかったのかもしれないなぁと 。やっぱり次に動こうと思ったら体力残ってないとダメでしょ?
どこでどういう風に働くにしても行動しようと思ったら体力がいりますし、私がここでヘロヘロなって死にそうなってから「もうあかんわ、何かするわ!」って言いだしてバイトに行くって…そんなの私は嫌だなって
そういうのも違うと思うし…そう考えるとまだパワーを使えるうちに何かを考え、行動した方がいいんじゃないかなと思ったのも1つですよね。
ーパティシエさんで独立後、自分のお店を閉めて違う道行くっていうような選択をされる方って結構いてるんでしょうか?独立したらゴールみたいなイメージがあるんですけど。
TOMOさん:あまりないかも。どうなんでしょうね、2号店とか3号店とか多店舗展開するのがこれまでは比較的ポピュラーだったのかもしれないけど、私は体1つしかないから1つ閉めたみたいな感じかな?
ー「もったいない」って気持ちなかったですか?
TOMOさん:周囲の方に「もったいない」とはほんとによく言っていただきました。でも今はそれ以上にもっと飲食を違う角度からも見て、学びたいことも沢山あるんですよ。「絶対このお店で頑張らないと!」って思い込んで縛られて身動き取れないより、もっと柔軟に考えてもいいと思うんです。
ー例えば店を続けながら、違うテイストのお店を出店するような、いわゆる多店舗展開みたいなやり方は考えなかったんですか?
TOMOさん:私は多店舗展開させていけるような経営能力のある人じゃないし、そんなにできる人じゃないですよ。だから今回の選択は私の人生の後半に進むための区切りだと思ってます。
とにかくこのお店でやれることは全てやりきったってこと….やりきったのかな?言い切ってるけど、言い始めたら「これは!あれは!」って思うんだけど、その都度都度は全力だったから…それに閉店したからこそ分かったことも沢山あったので。
閉店したからこそ分かったこと
頂いたお菓子を食べ始めるTOMOさん
ー閉店して何が分かったんですか?
TOMOさん:「自信はなかった」ってこと。
ー嘘でしょ!?めっちゃ自信あるように見えてましたけど!!
TOMOさん:ずっとそう感じてましたよ。例えばスタッフに対して言ってることとか、やってることとか。「これでいいのかな?」っていう気持ちはずっとどこかにありましたね。もちろん信念をもって言ってたり、やってたりするんですけど…やっぱりどこか不安でしたね。
それに私スタッフに対してめちゃくちゃうるさかったんですよ。細かいことも沢山いいますし、スタッフも「何でだろう?」って思ったかもしれないし、現に思ってた子もいたし。でも最終的にはお客さんから頂く言葉に「TOMOさんが言ってたこと」がこういう言葉になって返ってくるんだというのを感じてもらえる事が多かったんです。
ー口うるさいTOMOさん…なんかそれも意外な感じがします(笑)具体的にどんな言葉かけてもらったんでしょうか?
TOMOさん:私ねスタッフにしてもお客さんにしてもこの空間にいる自分を好きになって欲しいなってオープンの時思ってたんです。ここでお茶してる自分が主役…じゃないけど好きみたいな。今回お客さんに一杯そういう言葉を頂いて「良かったんだな~間違ってなかったんだな~」って。
フィナーレを一緒に迎えたスタッフさんたちと
閉店することを発表してからとにかく毎日がハードで「この3ヶ月はめちゃくちゃハードやったし、しんどかったやろ?」ってスタッフに声かけたら「でもすごい幸せでした」って言ってくれて、そこに幸せを感じてくれたことがすごい嬉しかった。
お客さんはもちろんのこと、スタッフが楽しんでくれてることも私の中では凄く大事なことの一つだったから。
ー今そんなふうにスタッフの方に思ってもらえる職場がどれだけあるか汗。そう言ってくれるスタッフの人がいてくれるって中々ないと思いますよ。そういうところにもcafe de GAMOYONが人気店だった理由があった気がしますね。今日はお忙しい中インタビュー受けてくださってありがとうございました!!
TOMOさん:こちらこそ!ありがとうございました!!
取材を終えて
人気のあるお店を閉店。その姿はまるで「まだまだできるやん!」って言いたくなるプロスポーツ選手の早期引退を見ているようでした。開業して多店舗展開といったキャリアアップがまだまだ主流な業界において「もっと自由に!もっといろんな事を学びたい!そして目の前のお客さんに喜んでもらいたい」と話すTOMOさん。
その行動力を目の当たりにすると本当に新しい働き方、新しい時代の到来を感じずにはいられません。
取材を終えての、その後
またその後の取材で新たな古民家との出会いがあり、新店舗をオープンすることが決定!!
そしてTOMOさんの手掛ける新店が昨日オープン!!今度の場所は今福東。気になる方はぜひチェックしてみてください。
▼リオープン当日の様子。
出典:cafe de GAMOYON公式Instagramより